受験生にとってはまだ個別試験に向けて勉強を続けているところでしょうから、この資料自体はあまり意味が無いでしょう。しかし来年度以降に受験をする高2生以下の人や、その生徒を指導する人たちには非常に役立つものでは無いかと思います。
さてこの内容から、今後の対策に繋がるお話をしていきましょう。
まずは数学について。こちらは数学IAにてかなり混乱をさせられたものの、過去5年間の平均点の推移を見ていくと「平均点の変動の範囲内」に十分収まっています。かなり難しかったと言われている「平成22年度」の数学IAの方が、平均点自体は少なかったのですね。
ただし今回の混乱は試験の平均点ではうまく伝わりません。何度もこちらで書いたように「数学IAで引っ掻き回されたため、その後の数学IIBに悪影響を受けた」という人が数多くいたはずなのです。
と言うことは、まず数学に関して感じるのは「どのような問題が出ても、またそれにどれくらい手が出せたとしても、解ける問題を丁寧に解いていく」という当たり前の結論にたどり着くことです。実際に今回の数学IIBの平均点を見ても、今までの平均点の推移から見て”やや高め”になっているのです。
つまり、数学IAで混乱したとしても、数学IIBで多少の挽回をした受験生も少なからずいるのです。この事実が非常に大切なことなんですね。
このことは残念なことに、次回のセンター試験からはただの「過去のデータ」となってしまいます。全国でもたくさんの”指導困難な状況”が生まれていると思いますが、次のセンターを受ける人からは「いつもの平均点と大差無い」という形でしか見られないのです。と言うことは、今のこの状況を肌で感じている人が、何らかの形でこの内容を記しておき、後の受験指導に役立てないといけません。
次に理科系の科目について。こちらはまず、平均点の推移では無く受験科目の割合に注目してみます。理系の人ならばよくわかると思いますが、理科系科目で最も受験者が多かった科目は「化学」です。これは物理理系であれば”物理と化学”、生物理系であれば”生物と化学”という科目選択が最も多いパターンなので、納得がいきますよね。
その反面、最も受験生が少なかった科目が「理科総合A」。実は今回のセンター試験で最も難化したであろう科目です。次いで「理科総合B」「地学」と続いていくのですが、気になるのは”地学の受験生の少なさ”。以前からも指摘しているように、平成27年度のセンター試験から新指導要領に基づいた内容に変わります。そうすると「センター試験で地学分野を解答する」という受験生が、かなり増加するはずなのです。
今の受験生にとっては、指導要領の関係で、地学の受験が少ないという現実は理解できます。しかしそろそろ地学指導のノウハウを身に付けておかないと、今の高1生の受験に響いてくるのですね。そういう意味ではもう少し、地学や理科総合Bなどの科目の指導に目を向けていないといけないのでは、と感じているのです。
おそらく理系の受験生は、今後も「物理」「化学」「生物」がメインとなることでしょう。しかし「文系でも実質”2科目分”の理科を受験する必要が出てくる」ということを考慮すると、地学の重要性はかなり高まるはずなのです。
資料を見る限り、地学はいつも平均点が他の科目に比べてやや高めであると言えます。これは地学が易しい科目であることを表しているわけでは無いはずです。むしろ「地学に自信がある受験生」しか受けていないのが現実なのでしょうね。
ということで、資料をざっと見た感覚でこの記事を書いてみました。この程度のことは、資料を読み直せばすぐに見つけられることかもしれません。しかし今回の受験生の混乱している状況は、それをきちんと記録しておかないと、後の指導に差がついてしまうと感じるのです。そこでいつでも”今の感覚を共感”してもらえるように、こういうことを書いたのですね。
今後大学受験を目指す方、また大学受験を指導する方が、試験対策を行うときに少しでもお役に立てるよう、私なりに考えて書いたつもりです。もし必要な場合にはぜひ参考にされて下さいね!