2014年度センター物理Iを見て

引き続き、先日のセンター試験の内容を見ていきましょう。今回は物理Iです。

まずは普段からこちらでも書いているように、物理という科目自体「非常に難しい科目である」という特徴もあり、かつ「非常に簡単な科目である」という特徴もあります。これは「理論の把握が非常に難しく、理解することに手間がかかる」という側面がある、ということが前者の意味であり、「理解してしまえば、基本問題も応用問題もそれほど(入試レベルの問題では)難易度に差がない」という側面がある、これが後者の意味になります。

これは今回のセンター試験の内容にも、如実に現れています。センターで扱われる物理Iの範囲を丁寧に理解しておけば、他の科目からは想像がつかないほど簡単に”満点が狙える”内容になっています。よく物理と数学が近いと言われますが、センター試験ではその計算量に格段の違いがあります。数学に比べたら計算が少ない物理は、本当に「対策が結果に直結する」と言える科目なのではないでしょうか。

そこで受験生においても、「理解している分野は簡単に正解する」ことと「失点をした分野はそもそも理解があまり出来ていない」ことが実感できるのでは無いかと思います。そこで、理解している科目が出題されているのかどうか、という部分で点数に差が生まれたでしょうね。

今回の問題は、やや出題分野に偏りがあるように思います。試験問題で全ての分野を均等に出題することも難しいことなので、今回の内容も許容範囲内だと思いますが、この微妙な偏りが受験生の点数に響いてきたことでしょう。

では内容に入りたいと思います。例によって問題はこちらから。 → 一昨日の記事

いつものように第1問は小問集合。

問1は力学的エネルギーを考えれば、計算なしでも明らかです。むしろ明らかすぎて「何か見落としがあるのか?」と心配になるくらいです(笑)。
問2は電気。”落雷”という話題ではありますが、実際にはジュール熱を計算するだけ。ただしこのような「身近な現象と物理を結びつける」というテーマ(これは以前の理科総合Aなどの影響か)は、毎年出題されていることです。落ち着いて「何を聞かれているのか」と考えていくと、初めて見るテーマでも問題なく解答出来ます。
問3は光の色とレンズの問題。レンズが出た時に「レンズの式」しか覚えていないような人は困ったでしょうね。光の色を考えることになるので、波長と屈折率の関係を見るだけの問題です。来年以降に受験する人は、この問題はノータイムで答えられるようにしましょうね。
問4は磁界から力を受ける電流について。どのコイルから発生する磁界なのか、ということに気づけば後はいつもの”右ねじ”と”フレミング”。
問5は弦の振動。ちゃんと弦の固有振動の導出をやっている人は、このような問題でも難なく手が動くでしょうね。「基本振動に対する倍振動は、一体なにが”倍”なのか」・・・このような基本的な知識があれば容易な問題です。
問6はモーメント。”うで”の長さの取り方がポイントですね。モーメントの問題は”作用線”に注目することを忘れないようにしましょう。

次の第2問は電気分野から。これも普段通りの出題形式です。

まず前半のAについてですが、これは最初のグラフを勘違いした人も多いでしょうね。問題文に書いてありますが、要は「”実効値”と”最大値”の関係」を覚えておかないといけません。その上で振動数から周期を計算することになります。しかし単純に周期を計算しても、きちんとグラフが読み取れません。こういう場合は「グラフが読み取れるポイントを考える」ことで、より簡単に解くことが出来ます。具体的には、60Hzなので3波長分の波を考えると分かりやすいですね!
また後半も、本来ならば自分で考えないといけないことが、問題文に明記されています。そのことからすぐに計算式が立てられるので、意味が分かっている人は迷いなく解答することが出来たでしょうね。

Bについては問4がやや難しいかも知れません。いったんスイッチを切ってしまえば、AとB、そしてレールも含めた全体が「一つのコイル」になっていると見ればいいでしょう。そうしたらいつもの電磁誘導です。

第3問は波動。これも例年通りの出題ですね。

前半のAについては、これも”ベルトコンベア”が出てきて一瞬「ビクッ」としてしまいますが、実はドップラー効果の関係式を導く手順をなぞっていくだけです。公式の暗記では無く、導出に力を入れているのかどうかで、解答の難易度に大きな差が生まれてくることでしょう。なお計算しなければいけないことは単なる等速直線運動のレベルなので、落ち着けば全く困らない問題かと思います。

次のBについては、問3は難しく考える人ほど間違えやすく、また問4は「この条件からどのような式を立てればいいのか」で困った人も多いことでしょう。問題には「開口端補正を考えなくても良い」という主旨の文章があります。しかしだからと言って、最初のピストンの位置50cmが1/4波長ではありません。この部分は開口端補正の計算と同じように、きちんと共鳴した場所までピストンを動かしてその幅で定常波を考えないといけないのです。

問4は問題から受ける印象とは異なり、今回の物理Iの試験において最も物理的に”高度な思考”が試される問題だと思います。ピストンを動かす前からずっと共鳴が途切れないようにするため、最初の50cmの時に管の中の長さLが何波長分に当たるのかを考え、”それを維持しながら”70cmまでずらします。だとすると70cmの位置でも”何波長分か”ということが変わらないのです。・・・ここがポイントなのですね!

そして最後の第4問は力学からの問題。これも例年通りです。つまり出題傾向は完全にいつもと同じものであると言えるのです。

まずはAから。これは基本問題である「連結物体における運動方程式」の問題。物理を勉強していれば、必ず何度かは解いたことがあるのでは無いでしょうか。
次のBは重心とモーメント。来年以降に受ける受験生は「問3が無くても、問4だけでも単独で解ける」ようになるようにしましょう。そうすると2次試験レベルの物理にも対応できるようになりますよ!
最後のCについては圧力の問題。このような問題は苦手にしている人も多いでしょうが、「管の断面積をSとおく」ことでほとんど解決することを知っておきましょう。特に気体部分の長さや液面の高さとSをかけると、気体や液体の”体積”になるのです。これで密度が使えるようになるのですね。

ということで全体をざっとお話しました。私の感想でも分かる通り、今回の物理は非常に解きやすい問題だったように思います。また数学IIBのように、徒に問題をわかりにくくしているものも無いので、非常にストレートな問題だったと感じます。そこで来年以降に受験する人には、恰好の練習問題になると言えると思います。

来年からは「物理基礎」と「物理」に科目が分かれます。今の「物理I」と「物理II」との分け方と異なるので、やや対策に困ることがあるかも知れません。しかし問題の質、レベルは変わり様がありません。そこでこの問題を基準に、対策を進めて欲しいと思います。

また今回の記事を書いている途中、ずっと意識をしているのが「物理を諦めて欲しくない」ということです。物理の勉強は分かるようになると非常に面白い。そして面白いと感じるようになったら、すぐに”間違えなく”なります。それぞれの分野の本質が掴めると、今回の問題くらいなら軽く処理できるようになるでしょうね。

そのためには、まず最初から苦手分野つぶしをやっていくことです。以前から書いているように、物理は前に勉強した内容をずっと先の分野まで使っていきます。ならばどこかに分からない分野があれば、そこから先はずっと分からなくなってしまうのです。一つ一つ、足元から固めていくイメージで、対策を進めて欲しいと、そして物理を”楽しんで”欲しいと思います。

ということで、明日は化学を書きたいと思います。化学でひとまず、このセンター問題に関するシリーズを終えたいと思います。ぜひよかったら、明日もご覧になって下さいね!

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2 Comments

  1. 里見千尋

    おはようございます。遅くなりましたが今年もよろしくお願い致します。
    数学,物理とコメントを拝見しました。
    いつものことながら丁寧に問題の考え方を説明されており,
    きちんと解きたい人には何よりの情報ですね。

    今日化学がアップされると思いますが,
    触れるかどうかはどもかく,理科総合Aもどこかで眺めておかれることをオススメします。
    定量的に深く聞けない分,知識や考え方でどこまで問えるのか,
    そのサンプルとなりそうな問題が多く出ています。
    化学分野の第1問は,問題そのものはさほど難しくはないのですが,
    そう簡単には点数のとれない問題,
    第3問は,高校入試でも出てきそうな問題ですが,
    改めて大学入試レベルで問われると「おっ」と思うような問題です。
    物理分野も,運動をしっかり考察する問題や,
    電気について切り口を変えてこういう問い方にできるのか,といった問題が出ています。

    以上,いらぬお世話のコメントにて。

    Reply
    1. nabe (Post author)

      コメント、ありがとうございます!
      化学は明日以降になりますが、コメントを頂いたように理科総合Aについても見ておきたいと思います。

      ご存知の通り、理科総合Aは昨年に大幅な平均点ダウンがありました。しかし国語(スピンスピンスピン)や数学IA(ODの長さ)などが注目されて、
      意外と理科総合Aの問題について触れられることはありませんでしたね。

      今回は確かに、教育課程の移行により、理科総合はあまり扱うつもりはありませんでした。けれどもご指摘の内容を拝見し、
      きちんと確認すべきであると感じました。ぜひ参考にさせてもらいます。

      ということで、これからもどうぞ、よろしくお願いします。

      Reply

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