以前放送された、とあるTV番組を観ていて感じたことを。
ここに学力がかなり低い受験生がいたとします。そしてこの生徒が、今の成績では到底不可能な志望校を目指していたとしましょう。その目標を立ててから、本人なりに一ヶ月ほど勉強したとします。そうして迎えた模擬試験、試験後の印象では「ずいぶん出来た!これはイケる気がする!!」、とのこと。
塾で勉強を教える、という仕事をしているとこういう状況をよく経験します。よく経験しているからこそ断言できます。
この模擬試験の結果は、ほぼ間違いなく「良くない」ものになります。
これはどうしてなのでしょう。
私が感じる一番のポイントは、「本人の認識不足」です。本来勉強というものは、基礎からコツコツと積み重ねていくもののハズ・・・なのに一ヶ月やそこらで急激に変化すると思っている時点で”アウト”なのです。
そしてこの認識は、自己認識にも関係します。自分がどれほど出来ていないのか、また目標からどれほど離れているのかを具体的に認識出来ていないので、自分なりにちょっと頑張った程度で結果が出てくると感じてしまっているんですね。
学力が低い生徒が少々勉強して詰め込んだところで、それは「それまでヤマ感程度で当たっていたものを、自分で解けるようになった」くらいの分量です。だからトータルの点数はさほど変わるはずがない・・・のに、その認識が不足しているわけです。
別の観点から考えましょう。とても勉強が出来る子が、試験を終えるたびに「今回はあまり出来なかった・・・」と口にし、それでいてびっくりするような点数を出している、なんてことが身近にありませんでしたか?これはその子がイヤミを言っているわけでも、過剰な謙遜をしているわけでもないのです。
すでに身についているものがあったとしても、まだ届かないものがあるのです。だから意識がその”出来なかったもの”に行っているので「出来なかった」という言葉になるのです。このことは、周りとは、自分に課しているハードル自体が違っている、と言えばより分かりやすいでしょうか。他の人よりもずっと高いハードルなのですが、それを超えられないので「あまり出来なかった」のですね。
話を戻します。本来勉強は、基礎からコツコツと積み重ねていくべきものです。だから自分なりに少々勉強したところで、トップクラスの学力層に手が届くわけがありません。もっともっと努力を続けていかないと、簡単には追いつけないのです。
・・・分かっていただけるでしょうか。受験直前に少しばかり”本気”になるだけでは通用しないレベルがあるのです。
そのレベルにチャレンジするのであれば、それ相応の覚悟と、物理的な時間が必要になります。すでに受験生となり、そういう時間が確保出来なくなっているのであれば、現実的なレベル帯に目標を設定せざるを得ないのです。
もしも妥協出来ない目標があるのであれば、早くスタートしてください。
”自分なり”に頑張ればどうにかなる・・・そういうファンタジーのような認識は改めてください。
そして「どうしても届かない」という状況であれば、視野を広げ、別の目標を模索してください。本当に自分の目標は”絶対”なのか、場合によっては自分が壊れてしまうまで追求すべきものなのかどうか、もっと自分に必要な勉強や生き方があるのではないか・・・人生は、受験よりもずっとずっと長いものなんですからね。